K.I.H.S.WEBコラム
2015.11.30
覗いてみよう! 世界各国の英語教育 - スイス編
アメリカのように複数の州から成り、それぞれの州が自治権を持っているスイス連邦。地理的・歴史的な理由からスイスは公用語が多く、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語が話されています。グローバル社会になるにつれてスイスでも英語の重要性は高くなっており、連邦政府は英語教育に力を入れています。しかし公用語が多い関係で、スイスでは英語教育に難航しているようです。
どのような取り組みが行われ、どのような課題があるのか、以下ではスイスの英語教育事情をご紹介します。
どの州でも英語は“第二”外国語
外国語教育において、はじめに習う外国語を“第一”外国語、次に習う外国語を“第二”外国語といいます。まずは、日本とスイスの外国語教育を簡単に比較してみましょう。
・日本
第一外国語:英語
第二外国語:フランス語、ドイツ語、中国語などから自由に選択
・スイス
第一外国語:母国語以外の公用語
第二外国語:英語
以下に、スイスの具体的な教育の流れをご紹介します。
冒頭にもあるように、スイスには公用語が複数あります。そのため、地域によっては母語が変わるということもあります。スイスにはドイツ語を母語とする州や、フランス語を母語とする州などがあるのです。その関係もあって、スイスでは州が教育方針を決定することになっており、学習する外国語において違いが見られます。
公用語が複数ある国の弱点として挙げられるのは、州をまたぐと国内でも言葉が通じない場合があるということ。そのため、スイスではどの州でも第一外国語として別の公用語を学びます。ドイツ語圏ではフランス語を、フランス語圏ではドイツ語を、というように。スイス国内ではドイツ語の分布が63%以上と多数派のため、ドイツ語圏“以外”の州では、ドイツ語を学ぶことが将来の就職に重要であると考えられています。
スイスで第一外国語を習い始めるのは、基本的には小学校5年生から。そして中学校に上がってから、英語を習い始めます。このように、スイスでは英語を“第二”外国語として位置づけているのです。上述のとおり第一外国語は州によって異なりますが、第二外国語は英語で統一されています。
英語を“第一”外国語にする動き
まずは他州の公用語を学ぶことが優先されてきたスイスですが、グローバル化の一途をたどる国際社会に対応するため、以前から英語の重要性が叫ばれていました。2000年代に入ってから英語が重要だとする動きが加速し、ドイツ語圏の州を中心として英語教育を前倒しにするケースが出始めます。つまり、フランス語学習を始めるのを従来の小学校5年生としたまま、それ以前に英語を学習しようというのです。
これは、スイス経済の中心地であるチューリヒ州などに外資系企業が多く進出してきたことなどが理由に挙げられます。そういった企業は英語を社内公用語としているケースが多いため、将来に備えて英語の重要性が増してきているわけです。
しかし、この英語を“第一”外国語にする動きは問題も抱えています。スイスは各州が行政の決定権を持っており、教育制度についても州が独自に決めます。そのため、一部の州では小学校の中頃から英語教育を初めているのに別の州では中学校から、という差が発生しているのです。特にフランス語圏の州では、上記のとおりドイツ語を学ぶことが優先されるため、英語教育を優先することに対する反発があるともいわれています。
このような外国語教育に関する問題も含め、州によって教育内容の差が大きいスイス。2009年には、“HarmoS協定”という国内で教育の質を統一しようという動きが施行され、外国語教育に関しても効果的な統一化が期待されています。
早い時期に英語に慣れておくこと
このようなスイスの英語教育事情は、公用語がひとつで、かつ“ほぼ”単民族国家である日本にはあまり関係がないかもしれません。しかし英語教育の開始を早めたという点からは、学ぶことがあるといえます。
スイス人は、公用語が複数あって英語も学ばなければならないという背景から、2~3言語話せることが当たり前だとされています。できるだけ早いうちから外国語教育を始めていることもまた、その理由のひとつとなっています。また、イギリスが近いこともあり、多くのスイス人が大学時代にも就職後もホリデーなどを利用してイギリスに短期留学し、英語学校で実践的な英語を学んでいます。ケンブリッジ英検でFirst Certificate(中級英語)やAdvanced English(上級英語)に合格、あるいはIELTSで中級以上の英語力を証明できると、企業内で優遇されることが主な理由だと言われています。また、スイスには英語で教育が実施されるインターナショナルスクールも存在し、高度な英語力が養われています。
日本でも早い時期から英語に触れる取り組みが多く行われており、インターナショナルスクールがそのひとつです。東京・大阪・名古屋などの都市圏をはじめ、全国に広がりつつあるインターナショナルスクール。英語による教育を行い、早いうちに英語に慣れ高度な英語力習得を目指しています。英語教育が幼保から始まるところもあれば、中高から始まるところもあり、大阪には高等課程だけのインターナショナルスクールもあります。かつては在日外国人、あるいは帰国子女が多く通うインターナショナルスクールでしたが、現在では一般的な日本人にも広く門戸が開かれています。そのため、将来に備え、すぐにでも質の高い英語教育を受けることができます。
夢のバイリンガルへ
多くの公用語があることから、バイリンガル、トリリンガル、それ以上の多国語話者であることがめずらしくないスイス。州の違いから英語教育の早期開始には難航しているようですが、外国語教育の早期開始は効果的であることを示しているといえます。大阪で周囲の人よりも実践的な使える英語に慣れたいというのであれば、高等課程からでも入学ができるインターナショナルスクールへ通うことが効果的です。