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2016.08.26
有権者として求められる力を身に付けるために(中編)
(前編の内容)
- 18歳選挙が実施されるにあたり、主権者教育が公民科目において必要とされるように
- 政治に対する関心は個人差がとても激しく、極論に走る生徒も居るので評価が難しい
- 学生運動が激しかった70年代、高校現場にも暴力行為が蔓延し、それを危惧した文部省は「高校生は学校内外での政治活動を自粛するべき」という通知を出した
国民投票を想定したアクティブ・ラーニング
現在、私が政治・経済を担当している2年生の大半は16~17歳ですので、7月10日の参議院選挙の選挙権はありませんでした。ですが、良い機会ですので授業進度を調整し、参院選直前の授業は「日本の選挙制度」「選挙をめぐる諸問題」といった単元に当たるようにしました。生徒は選挙の複雑な仕組みに加え、「小選挙区比例代表並立制」「非拘束名簿式比例代表制」といった教科書上の漢字の羅列に辟易し、難解に感じていたことだろうと思います。
こうした暗記中心のインプットの学習は大切です。ですが、仕組みを暗記する内容だけに留まっていては、主権者としての自覚を促し、投票率の向上を図る「主権者教育」の目標を達成するのは困難であると感じました。ですので、今回のアクティビティは「模擬国民投票」と称したロールプレイを行い、以下の手順で憲法改正の是非を考えてもらうことにしました。
模擬国民投票の実施に至るまで
- 憲法改正のプロセス(現行憲法96条)を理解する。
- 自民党による「日本国憲法改正草案」の指定個所を読み、理解する。(生徒全員)
- 以下の提出課題を模擬国民投票当日までに仕上げる。(生徒全員、期間一週間)
- 改憲派、護憲派から代表演説者1名、副2名を選出する。(教員による指名or立候補)
- 残りの生徒は街頭の聴衆、質問役として模擬国民投票に臨む。
- (当日)代表者演説、両陣営の質疑応答、聴衆からの質問タイム。(約45分間)
- (当日)授業終盤に無記名で投票。選択肢は改憲、護憲、棄権の3つ。(生徒全員)
- (当日)その場で開票。改憲派、護憲派の勝敗結果は成績には影響しない。
課題内容の冒頭部分の抜粋
先日の参院選の結果、史上初の国民投票の実施が現実味を帯びて来ました。自由民主党は平成24年4月27日に公表された「日本国憲法改正草案」をもとに憲法審査会でしっかり議論してゆく、と明言していますが、我々も自民党がどのように(どのような意図でもって)改憲しようとしているのか、知っておく必要があると思いませんか?
国民投票が実施される時期は恐らく2017年以降であると思われます。実施時期によっては現在2年生の皆さんも投票権が発生します。改憲or護憲、正答はありません。改正案を自分の目で見て判断して欲しいと思います。
- 検索ワード「日本国憲法改正草案」検索。自民党HP内のpdfページに繋がります。
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf ※上段が新憲法案
- 一読し、最後まで目を通して下さい。以下の条文は熟読必須項目です。
- 1条 ②3条 ③9条 ④15条 ⑤24条 ⑥25条 ⑦98条 ⑧100条(旧96条)
- 「自民党憲法草案の条文解説」「改正草案 対照表」様々な検索ワードで検索すると、参考サイトがヒットします。知識を深めたい人は活用して下さい。
- 以上の内容に従い、7月22日(金)授業時までに以下の設問を完全に埋めておくこと。
アクティブ・ラーニングの課題
討論者を6名に限定したのは、①生徒によって内容理解度、積極性に差があり、②45分間という時間制限の中で、クラスメイト全員の発言量を均等にして議論することは不可能であること、③ディベート形式で相手を論破することに重点を置くのではなく、説得力を重視したこと、④無記名の投票を通じて民主主義をリアルに感じてほしかったこと、等が挙げられます。アクティブ・ラーニング(生徒の自主的な活動に重点を置く発言・対話型学習)の課題は、生徒元来の気質によって発言・活動量に差が出来てしまうことです。教室内は社会の縮図です。様々な集団力学、心理が働きます。人数が大きくなれば大きくなるほど、特定の人物に発言量が集中し、議論が収斂されていくようになります。また、「他の人が発言するから、今この場で自分が発言しなくても良いだろう」という心理(集団的手抜きの法則)も働きがちです。
ならば、討論者をアクティブな生徒に限定し、それ以外の生徒は他の役割を与えたほうが時間を有効活用出来る、と私は考えたのです。と同時に「討論者に選ばれなかった生徒の興味関心が薄れ、意欲が削がれるかも知れないな」とも思いましたが、それは杞憂でした。「日本国憲法改憲草案」を紙媒体で渡すと数十枚にも及び、とても嵩張ります。今の生徒はスマホネイティブ世代なので、各自で検索してpdfファイルを画面上で閲覧するだろう、授業が終われば紙媒体は邪魔になるだろうと思い、討論者のみに紙媒体を渡したのですが、このやり方は不評でした。「紙媒体で欲しい」「私もしっかり読みたい」という多数の声を受け、急遽増刷することになり、嬉しい誤算となりました。
「大半の生徒は憲法改正含め、政治問題に関心は薄いだろう」という私の授業前の予測は外れました。前編ブログの末尾でも言及したように、私の考えも「若者は政治に無関心」という大人による一方的な決めつけ、主観であったのかも知れません。もっと大多数の生徒が参加できるような工夫が必要です。今後の改善点としたいと思います。
(続く)
社会科 松尾祐樹
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