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2017.10.14 先生のつぶやき
世界史における石
私のニッチな趣味
学生時代の一時期、ラピスラズリやターコイズといった綺麗な石を集めることに熱を上げていたことがあります。一般的には鉱物と呼ばれるそれらはアメリカのヒッピー文化ではパワーストーンと呼ばれ、占い好きの人々からはヒーリングストーンとも呼ばれます。装飾品として見ればカラーストーンとも呼ばれますし、土産物屋では天然石とも、宝石の観点から見れば半貴石とも呼ばれたりします。太古の昔から崇拝の対象になったり、旅のお守りになったり、顔料として絵画や壁画に使われたり、権力の象徴になったりもします。人類の歴史と密接に関り、時に重要な役割を果たしてきたのが鉱物なのです。
世界史Bの教科書より
ところで、今年度は世界史Bを担当させて頂いております。教科書を眺めていると、時々懐かしい石の名前が出てきて少し嬉しくなります。例えば、紀元前2,300年ごろに起こったインダス文明の代表的遺跡、モヘンジョ=ダロのページの片隅に「紅玉髄」という表記を見つけました。
紅玉髄の「玉髄」は別名カルセドニーといいまして、水晶と同じ石英の仲間です。濃い赤色から褐色のものは「カーネリアン」、アップルグリーンのものは「クリソプレーズ」と呼ばれています。非常に硬く加工もし易い為、古代から装飾品や芸術品に使用されてきました。それだけではありません。誰もが知っている世界史の超有名な英雄も時にこれらの石を珍重し、その不思議な力を信じていたのです。
ナポレオンとアレクサンドロス大王の玉髄
プトレマイオス朝最後の女王、かのクレオパトラ七世(紀元前69年 ~ 前30年)がエメラルドを寵愛したエピソードは有名やも知れません。そして、先ほどご紹介した玉髄もクレオパトラに匹敵する超有名な英雄が珍重した石として有名なのです。
(↑世界史授業用スライドより)
フランス皇帝ナポレオン・ボナパルト(1769年 – 1821年)はかなりの宝石愛好家として有名でした。その宝石好きのナポレオンが生涯で最も大切にしていたとされているのが、先ほど紹介したカーネリアン(紅玉髄)で作られた印章(権威や責任を証明するハンコ)です。カーネリアンは当時、指導者にふさわしい石として知られており、身に付けると勇敢になり聖なる言葉を刻むと悪運から身を守るとされていたようです。ナポレオンはこのカーネリアンの印章を生涯にわたって大切にし、その後も護符としてナポレオンの後継者へと引き継がれて行ったと伝えられています。
また、古代マケドニアの大王、アレクサンドロス三世(紀元前356年 – 前323年)はクリソプレーズ(緑玉髄)を戦場のお守りとして常に携帯していたと伝えられます。この石は古くから神の恵みを受け、勝利をもたらすと信じられていたようです。ある日、アクシデントからこのお守りを川に落として失くしてしまった大王は、すっかり戦意を失ってしまったそうです。
現代でもペンダントトップや数珠として貴石を身に付ける人は少なくありません。ファッション感覚の場合もありますが、そこには多かれ少なかれ何かしらの想い、願いが込められているのです。当時は向かうところ敵なしの歴史上の英雄も実は何か不安を抱えていて、こうした神秘的な力にすがっていた。そう思うとどこか親しみが湧いてきませんか?
参考サイト:Pascle 「パワーストーン辞典」
社会科 松尾 祐樹
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