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2017.06.29
弁護士をお招きして授業を行いました―「共謀罪」法、市民生活にどう関係するの?―
1~3年生が履修する選択科目『時事問題』の授業で、新しく成立した「共謀罪」法の問題点について学びました。
授業の様子をレポートします。
担当の木川先生が、議論沸騰している話題「共謀罪」を取り上げたいと考え、依頼したのが大阪弁護士会。
大阪弁護士会には大阪府内の法律事務所に勤める弁護士約4,000人が所属している。その大阪弁護士会から「共謀罪」に詳しい太田健義先生が派遣された。
6月15日の国会で成立した通称「共謀罪」法
テロ等準備罪として摘発できる法律。正式には「改正組織犯罪処罰法」。この法律は7月11日に施行される予定だそうですが、私たちの生活とどんな関係があるのでしょうか。
弁護士、裁判官、検察官、どこが違うのか?
「弁護士、裁判官、検察官の違いはどこにあるか分かる?」
そんな質問から授業本番が始まった。
一人の女子生徒が「弁護士は犯罪を犯した人を守る人。裁判官は裁く人・・・」と簡潔に答えた。
「さすがKI(本校)の生徒! いいぞ、いいぞ、分かってるじゃん!」と私は心の中で密かに応援していた。
すると太田弁護士。
「基本的にはそのとおりです。しかし、・・・。
実際、刑事事件では、確かに弁護士は事件を起こした人を弁護する人ですが、実は裁判の多くは刑事事件でなく、民事事件なんですよね。民事事件には原告にも被告にもそれぞれ弁護士がつく。そして、裁判官は、原告と被告間のトラブルを解決する人なんです・・・。」
法律は素人の文学部出身の私。
中高の教科書で習った程度の知識で、ついつい生徒の答えに賛同したのだが、実際に現場を経験している専門家の説明を聞いて、「事実は教科書的な知識より遥かに複雑なんだ」、とあらためて思った。
太田弁護士のお話では、私たち一般市民は刑事事件に関わることはほぼほぼないとのこと。しかし、金銭トラブルや離婚調停など、民事裁判にかかわる可能性はあるのだそうだ。
先生の話を生徒たちは真剣な眼差しで聞いていた。一方、先生は、授業開始直後は教室の空調の効きが不十分だったので、汗を拭き拭き、扇子で扇ぎながら授業を続けて下さった。
殺人事件だと、どうして断定できるのか?
・・・すると突然、
「殺人事件ってどうして分かる?」と太田弁護士がクラスに質問。
「死体にナイフが刺さっている、とか毒殺されたとか、調べて・・・本当に殺人なのか、事故死なのか、警察は調べるよね。死体が出てこないと、普通は殺人罪に問えないよね。」
「刑法では、例えば殺人事件の場合、死刑または無期もしくは5年以上の懲役となっている。これは、「・・・・した者は、○○○に処する」ということで、心の中で考えただけで実際に実行しないと殺人罪には問われないよね。」
高校生にもイメージできるように、法律の専門家としてパンチの利いた説明が続いた。
共謀罪だと、どうして断定できるのか?
「では、共謀罪はどうしてわかる?
「この法律の問題点は、実行しなくても計画段階で罪に問えるところ・・・・。」
「例えば、皆さんの中に会社の経営者がいるとします。・・・」と説明が続く。
話しを聞きながら私は心の中で考えた。
「うむ、うむ。KI(本校)生は将来起業したいっていう人がけっこういるんですよね! この前、立命館大に進学した卒業生もアフリカで会社を興し、貧しい人を雇って・・・なんて言ってたよね。でも、共謀罪と会社経営者とどんな関係があるの・・・?」
ある会社経営者の脱税と共謀罪の関係は?
先生の話を要約する。
会社経営者が収益を多く出すために、納める税金を減らそうと経理担当者と相談する。売上から必要経費を引くと利益となる。この利益に対して税金がかかる。税金を減らすため、経費を実際より多く申告したとする。すると「所得税法」違反で脱税になる。しかし、今回の「共謀罪」法では実際に申告しなくても経理担当者と相談し、計画していたことが分かった段階で犯罪になる恐れがある、と言うのだ。
「原発、再稼働反対!」を唱える市民団体と共謀罪の関係は?
「原発、再稼働反対!」
住民が原発リスクを恐れて反対運動をする。原発の再稼働をさせないためにダンプカーが通れないように座り込み運動をする。これは、「威力業務妨害罪」に問われる恐れがある行為。しかし、今回の「共謀罪」法では住民が相談・計画段階で共謀罪に問われる恐れもあるとのこと。
共謀罪では、自首するとどうなるの? この規定の問題点は?
「共謀罪」法では自首をすれば、減刑あるいは刑の免除になる、と規定されている。この規定も、悪意ある個人が同じ団体のメンバーを落とし入れるのに悪用される恐れがあるというのだ。「私たちは、こんなことを計画していました。」と一人が自首し、他のメンバーが逮捕される・・・。つまり、人を落とし入れることを目的に計画を首謀し、自分が自首することで、他人を犯罪者に仕立て上げる、そんな恐れがあるということ。説明を聞いて、猜疑心が心のどこかに潜む人間社会となってしまう恐れがある、そう思うと、ぞっとするように感じた。
また、警察の側からすると、ある犯罪計画のしっぽをつかみ、全貌を解決するためにメンバーの一人を自首するように促し、他のメンバーも一網打尽に逮捕する・・・そんな根拠となりうる、そんな恐れがある法律だそうだ。
警察は共謀罪をどう運用する恐れがあるの?
報道を聞いていただけでは気づかなかった問題点を太田弁護士は掘り下げていった。そもそも「共謀罪」法って、法律の専門家でも理解が難しい法律なのだそうだ。この法律の施行により、警察による盗聴や監視などの危惧があるとも指摘された。
共謀罪の話を聞いて、考えたことは?
1989年の年末、当時共産圏であったソ連やラトビアを訪問したことがある。その時、「盗聴されている恐れがあるので、気をつけるように!」と言われたのを思い出した。
もっとも、現在の日本ではそこまでのことはないと思う。しかし、政府の説明のように、テロ等の重大犯罪を事前に防ぐという法律の趣旨が遵守されるよう、本校の生徒たちを良識ある市民としてしっかり教育していく必要を感じた。
太田弁護士も言っておられたように、どの法律にも良い面と危惧すべき面がある。今回の授業では共謀罪の問題点が数多く指摘された。学校としては、生徒たちの教養と批判力を研き、バランス感覚と正しい判断力を身につけた人に育ってほしいと願っている。
教育主任 滝本武
共謀罪の授業を受けた生徒たちの感想
最後に生徒たちの感想を紹介します。
●共謀罪には今回のお話のようなテロ以外の計画も含まれているのは知らなかった・・。
●難しい言葉が並んでいて全く理解していなかった共謀罪(法)ですが、説明してもらって考えてみると分かったし、ここは変だなと思うところもあった。
●初めて、こんなに詳しく法律について話を聞きました。・・・(説明の中で)法律の名前は知っていても、どんな法律か知らなかったものもあったので、知ることができて良かったです。
●共謀罪は自分には関係ないと思っていたけれど、テロだけでなく、すごく広い範囲に及ぶことは知らなかった。
●ニュースで共謀罪はよく耳にしているけれど、内容はあいまいにしか分からなかった。しかし、今回、話を聞いてなんとなく理解できたので良かったです。
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